当ブログでは「聴き取りの姿勢」についてお伝えしていますが、その威力を再び実感する出来事がありました。
教育やコミュニケーションを学ぶ大学生に、”耳からアプローチする声とコミュニケーション”について話をする際、必ず行うことがあります。
それは、耳の働きを説明した上で、次の2つの姿勢で同じ音源を聴いてもらうのです。
①“いつもの姿勢”で、耳が胸のあたりにあるイメージで聴く。
②“聴き取りの姿勢”で、耳がうさぎの耳のように上に伸びたイメージで聴く。
この2つの「姿勢&耳の位置」で、聴こえ方に違いがあるかを体験してもらいます。
人間の感覚はそれぞれですので、変化なしという回答もありますが、ほぼ8割近くの学生が以下のような違いを感じました。
・音が大きく聴こえた。
・色々な音が聴こえた。
・まるでその場にいるかのような臨場感を持って聴こえた。
・音が立体的に聴こえた。
・空間を感じられたetc.
聴き取りの姿勢は、横から見たときに頭と背骨がつながり、重心を下に置いた上で耳を引き上げています。つまり、身体全体がしなやかなアンテナとなり、呼吸が深くリラックスし、耳がスッと立ち、周囲を俯瞰している状態です。
一方、パソコンやスマホと対峙している私たちは、次のようになりがちです。
・猫背。
・目は画面に過集中。
・イヤホンで音が運ばれてくるので、選択的に音を聴くことが少なくなる。
この状態では、五感がすべて内向きになっているように感じます。
聴き取りの姿勢では、聴覚をはじめとする五感が健やかに外に向かうため、聴き取りの広さや深さが増し、音を立体的に捉えることができるのだと思います。
先日、高齢者の方々にも同じ体験をしていただきました。年齢とともに聴力が低下するのは否めないため、差を感じていただけるか不安がありましたが、なんと学生と同じ反応を示してくださったのです。
聴力そのものは、どうあらがっても若い人と同じではありません、ですが、耳と体の使い方次第で聴き取りの感受性は変わることを再確認し、人間の耳の可能性を感じました。
そして、老化による聴力低下を少しでも遅くするには、やはり、姿勢、聴く、話す、に意識を向け続けることだと思いました。
学生の中には、この聴き取りの姿勢を意識してのコミュニケーションを心がけたら、部活でのやりとりがスムーズにできた、といううれしい報告もありました。
時々は、手のひらの小さな画面から耳と目を離し、空間に耳を澄ませ、耳を健やかにのびのびさせましょう~。