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(1)滑舌が悪い、声がこもる等の問題に”聴くことから”アプロ―チする【息編】

(1)滑舌が悪い、声がこもる等の問題に”聴くことから”アプロ―チする【息編】

トマティスメソッドの基本理論は、「聴き取りが変われば、発声が変わる」です。

私達は、声から相手の微細な感情や体調等を感じることはありますが、自分の声となると、
意外と聴いておらず、繊細に耳を傾けていないことが多いです。

トマティス発声では、自分の声の何にフォーカスして、どのように聴くかをお伝えしています。
声を構成している要素をあらたに認識していくことで、聴き取りの解像度は増し、それが声に反映されていきます。

それは、耳を使って「自分の声をよく聴く」ことから始まります。

「自分の声をよく聴く」ことは、「自分を客観視する」ことにもつながり、発声だけでなく、コミュニケーションにも影響をもたらします。

<滑舌が悪い、声がこもる等の問題に「聴くことから」アプロ―チする>では、声がこもる、声が通らない、滑舌が悪い、といった声の問題解決に様々な要素から
アプローチしていきますが、その視点は常に、トマティスメソッドの要である「自分を聴く」、
「観察する」です。

【息編】 

まずは息に注目してみましょう。
声は「息を伴っている」、「息とともに運ばれている」という意識がある方は、少ないかもしれません。

コロナ発生初期の頃、盛んにテレビで、息がどのように空中を漂っているか、拡散されているかを
可視化した映像が映し出され、ご覧になった方は多いかと思います。
感染の恐怖とあいまって、気持ちよくこの映像を見ることはできなかったですが、見えないものを意識する機会にはなったかと思います。

発声に関しては、見えないこの「息の行方」を意識することは実はとても大切なことです。

声がこもる、声が通らない、滑舌が悪い等の要因はひとつではありません。
ですが、見直す要因のひとつに、まずこの”息”があります。


息が流れていること

声を出すためには、様々な身体の部位―横隔膜、肺、気道、声帯、舌、歯、唇等―が、関与しています。
吹奏楽器が、吹き込む息があってこそ音が鳴るのと同じで、これらの部位を息が通過することで音声は誕生します。

極論を言うと…発声とは「息が流れていること」、「息が外に出ていくこと」です。



息の通り道を意識する

広隆寺 弥勒菩薩 上野直昭『上代の彫刻』(朝日新聞社、1942)
発声に必要な息がすこやかに体から外に出ていくためには、息の通り道=“気道”が確保されていることが大切、つまり姿勢が重要ということです。トマティスではそれを”聴き取りの姿勢“と言います。

なぜ単に「姿勢」ではなく「聴き取りの姿勢」と言うのか、「聴き取りの姿勢のポイント」等詳細は、また別途をお伝えします。見本の姿勢は、大仏様、観音様などの姿勢です。

横から見ると、頭⇒首⇒背中⇒腰までのラインがきれいです。またこのラインが美しいのが、特にアスリートの方です。

どのスポーツであっても、基本姿勢はこれに近いと思います。野球のバッター、スキー、バスケ、バレーボールetc. 

ポイントは、反り腰ではない、ということ。私達は、“ちゃんとした姿勢”をとろうとすると、胸を前に突き出しがちですが、実際にその姿勢は、腰は反り気味になり、呼吸のたびに、肩が上下する、つまり呼吸が浅くなります。

スポーツに必要な、リラックス&集中、瞬発力、シンプルな動き(無駄がない)等は、呼吸が深いことが大切です。さらにいうと…深いところからの呼吸は、自分の中のざわつきが消え、静かな状態をいざないます。
一流のアスリートの方々の内面は、観音様のような静かさがあるのかもしれません。平常心だからこそ、実力が発揮できる…。

コミュニケーション、プレゼン、パフォーマンス、でも同じことが言えます。内面が静かであると、落ち着いた対処ができる。だから深い呼吸が大切、姿勢が大切、なのです。

頭⇒首⇒背中⇒腰までのゆるやかなラインをいつも意識して下さい。

この姿勢の時、息の通り道(気道)が確保され、息の送り出しをする横隔膜がきちんと動かせる状態にあります。


息を見届ける

聴き取りの姿勢で、息の通り道を確保し、息の送り出しができる状態にしたら、いよいよ発声です。
「おはようございます」を例にします。

① ろうそくを吹き消す時のような口をし(口角を少し前に突き出す)

② 自分の口から、そうめん流しのような樋が出ているイメ―ジをします。
  樋は下向きにはせず、口から真っすぐに伸びているイメ―ジです。


③ その樋に沿って、心の中で「おはようございます」と言いながら、フーーーーーと息を前方に流します。
「お」から「す」まで、移動していく息の行く末を最後まで見届けます。

④ 今度は実際に「おはようございます」を声に出します。③と同じように、樋の上を「お」から「す」まで前方に進んでいくのを聴き届けるように言います。

ひとつひとつの音が、口の外に一歩も出ずに、すべて口の中だけで留まらせていると、声がこもる、通らない、滑舌が悪くなる、などが起こります。もちろん、他にも要因はありますが、まずは、息とともに音を外に出す、外に出ていく音を「聴く」です。

外に出ていく自分の声を聴くことに勇気がいる方もいます。ここでは、まず大きな声は必要ありません。小さい声、今できる音量で全く問題ありません。まず外に息をふ~~~~と流してみることから始めてみてください。

発声は、呼吸とともになされているのです。その呼吸を聴いてください。

実際の音声は、紙面ではなかなかお伝えきれない部分があります。
ご関心のある方は、耳と声の講座にぜひいらしてください。