耳と体を拓く”響き”
トマティス発声においては、前回お伝えした“声の要素”の中で一番最初に認識していただくのは声の“響き”です。
仏壇のおりんやお寺の鐘の音を想像してみましょう。
チン~~~~、ゴォン~~~~、のたなびく「~~~」は、耳が澄まされるようで、また耳を彼方に持っていかれるようで、気持ちがいいです。
声も同様です。響きが伴った声は、ある程度の部屋であれば、大きな声でなくても、声は空間を伝播して、聞き手に届きます。
そして、なによりも気持ちのよい響きは、耳を拓き、身体もリラックスさせてくれます。それは聞き手だけでなく、発し手である自分自身もです。
コミュニケーションはもちろん内容が大事ですが、それと同じくらい声も、耳に心身に色々な意味で
影響を与えています。
伝えたい内容を聞き手に聴いてもらうためには、耳を拓いて全身で受け取ってもらえる“響き”をまずは認識することが大切とトマティス発声では考えます。
響きはどこで作られる?
では、この響きはどこで作られるでしょうか?
鼻腔?頬骨?口腔内? もちろん、こういった部位も響いていますが、
トマティスでは、意識するのは“背骨”としています。大黒柱のように身体の中心にある背骨が振動すれば、他の骨にも効率よく伝播し、身体がスピーカーになってくれます。
そして、前回ご紹介した聴き取りの姿勢が、声帯の振動が一番背骨に伝わりやすい状態なのです。
骨導ハミング
この背骨を意識して発生させる響きをトマティスでは「骨導ハミング」と呼んでいます。
鼻腔を主に共鳴させるハミングより柔らかで、空間を包み込み、かつ解放するような音です。
空間が鳴るので、音源がどこなのかわからないような響き。
初めて骨導ハミングを聴いた方は、クリスタルボールのような音ですね、とおっしゃる方もいます。
声帯の振動が背骨に伝わって生じるその柔らかい響きは、その人固有のピュアな響きです。
骨導ハミングのこつは、響かせようとせずに、そのまま“その響き聴き続ける”ことです。
そうすると、余計に息を使うこともなく、余計に声帯に力を入れることもなく、やわらかな響きが続きます。
身体が緊張していたり、響かせようとしたりすると、固い、広がりの少ない響きになってしまいます。
まずは、聴き取りの姿勢を取り、深いところから呼吸をし、背骨を意識して、優しくそっとハミングしてみてください。それをひたすらに聴く…。
自分とのコンタクト
この小さな響き、振動を感じ、聴き続けることは、自分を受入れることであり、自分とのコンタクト、自分との対話です。
自分とのコンタクトなしで、相手とコミュニケーションすることはできない、とトマティス博士は述べています。
ぜひ、自分の声の源泉である骨導ハミングを聴いてみてください。
ご自身の骨導ハミングの存在をぜひ知っていただきたく、ご関心のある方は、月1回開催の
「耳と声の講座」にいらしてください。